ニュースをもとに公民のポイントをまとめ(一票の格差)

一票の格差から中学公民を学ぶ

2016年7月に行われた参議院選挙の「1票の格差」に対する判決が広島高裁から出されました。「違憲状態」だが、選挙は有効という判決。

 

「1票の格差」をめぐっては各地で訴訟が起こされており、その判決の第1弾です。最終的には最高裁大法廷で統一判断が出される予定となっています。

 

7月の参院選では初めて「合区」が導入されるなど、格差解消への取り組みも行われていました。今回は「1票の格差」を含め選挙制度についての公民のポイントを勉強します。

 

選挙に関する4つの原則

選挙には4つの原則があります。

  • 普通選挙 … すべての成人に選挙権が与えられる
  • 秘密選挙 … 誰が誰に投票したかわからないように無記名投票で行う
  • 直接選挙 … 有権者が直接候補者を選ぶ
  • 平等選挙 … すべての有権者が平等に1人1票を持つ

 

現在の日本の選挙はこの4つの原則があてはまりまあすが、そうでない時代もありました。例えば、第1回衆議院選挙(1890年)は納税額により選挙権が限られていました。

 

4つの原則にある「普通選挙」は、こうした納税額などにより制限をかけることを禁じたものです。このことは日本国憲法の第15条に規定されています。

 

【日本国憲法第15条3】
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

 

また、「直接選挙」に対するものとして「間接選挙」があります。アメリカの大統領選間接選挙で行われ、有権者は選挙人を選び、選挙人が候補者を選ぶ形式になっています。

 

今回のテーマの「1票の格差」が問題となるのは「平等選挙」です。
日本国憲法では第14条で「法の下の平等」を定めています。

 

「1票の格差」はこの「法の下の平等」に反するから憲法違反だとして問題になっているわけです。そもそも、なぜ格差が生じるのかについて考えてみたいと思います。

 

1票の格差が出来るわけ

1票の格差とは、1票の価値が選挙区により異なるということです。

 

有権者数は選挙区により違います。有権者数が多い選挙区は定数(当選枠)も多く配分されますが、この配分が有権者数の違いを正確に反映していないことにより格差が生まれます。

 

例えばこんな感じです。

  • A選挙区 … 有権者数10万人 : 定数1人
  • B選挙区 … 有権者数50万人 : 定数2人

定数1人あたりの有権者数がA選挙区とB選挙区では違いますよね。
A選挙区は10万人、B選挙区は25万人です。

 

10万人の代表と25万人の代表というわけです。

 

どちらのほうが有権者1人の価値が高いかというと10万人の代表のほうですね(10万分の1と25万分の1の違い)。これが1票の格差というわけです。

 

「B選挙区の定数を5人にすれば格差はなくなる」というのは正解です。
確かに「1票の格差」はコレで解決です。

 

では、なぜ解決しないのかというと、その解決方法では議員数が膨大に増えてしまうからです。
議員定数削減も政治課題です。これに反するんですね。

 

解決策として導入された合区

そこで、導入したのが合区

 

上の例で言えば、A選挙区とC選挙区(有権者10万人:定数1人)をあわせて新しいD選挙区として、この定数を1人にしてしまうという考え方です。

  • B選挙区 … 有権者数50万人 : 定数2人
  • D選挙区 … 有権者数20万人 : 定数1人

こうすると定数1人あたりの有権者数がB選挙区は25万人、D選挙区は20万人となります。D選挙区がA、C選挙区だったときよりマシになりました。

 

ただ、あくまでマシなだけで、まだまだ不十分というのが今回の「違憲状態」判決です。

 

選挙制度に関する中学公民のポイント
  • 選挙の4原則 … 普通選挙、平等選挙、直接選挙、秘密選挙
  • 制限選挙 … 普通選挙と異なり納税額などにより有権者を制限するもの
  • 間接選挙 … 有権者が選挙人を選ぶアメリカの大統領選などのこと
  • 1票の格差 … 日本国憲法第14条の「法の下の平等」に反するとして問題になっている

 

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